ウールの紡績には梳毛紡績と紡毛紡績があります。
それぞれ紡績工程は異なっているのですが、梳毛・紡毛共に最終工程で「精紡」という工程があります。
精紡とは粗糸をドラフト(テンションをかけて引き伸ばすこと)、加撚(撚りを入れる)、巻き取りをすることです。その精紡工程で採用される紡績方法が「リング紡績」と「ミュール紡績」です。今回はこの2種類の紡績方法を説明します。
リング紡績
リング紡績は精紡工程においてドラフト、加撚、巻き取りを同時に連続的に生産していく紡績方法(紡績機)です。同時かつ連続的に稼働し、場所もミュール紡と比べて必要としないため、生産性に優れています。梳毛紡績・紡毛紡績 両方に採用されています。


ミュール紡績
ミュール紡績は精紡工程においてまず粗糸を20mほど引っ張ってドラフトをかけその場に留まりながら回転し加撚していきます。加撚が終わった後にドラフトする前の位置に戻りながら巻き取っていきます。リング紡績と比べて3つの工程(ドラフト、加撚、巻き取り)を交互に行うので時間を要し、場所もかなり必要となるため、生産効率は悪いです。紡毛紡績のみに採用されています。
ここまでの説明だと梳毛・紡毛どちらもOKで生産性も優れているリング紡績の方がいいのでは、と思われるかもしれませんが、ミュール紡績ならではの優れている点もあるのです。
ミュール紡績では、加撚工程で粗糸を引っ張りながら回転する際に遠心力が加わります。すると、長い繊維は内側に、短い繊維は外側に自然と配置されるため、芯がありながらも表面はふわっとした風合いの糸になります。
この風合いはミュール紡績でしか作ることができず、機械の微調整は熟練の職人の手によって行われています。


生産性がいいリング紡績、独自の風合いを持つミュール紡績、
それぞれのメリットを理解しながらものづくりに生かしてみてはいかがでしょうか。