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メディア 2026.05.22

尾州の紡績と商社がタッグ

尾州の紡績と商社がタッグ

繊研新聞:2026年5月22日(金)更新

 

ウール生地で知られる尾州産地で、既存設備から新しい価値を生み出そうと挑戦する動きがある。
産地に残る設備や技術に可能性を見いだすのは、紡績の東和毛織と商社の瀧定名古屋だ。
本来ウールに使われる機械で綿を紡績し、〝唯一無二〟の生地を作っている。

 

原理は同じだが

 

ウールも綿も紡績の原理は同じだが、ウール用の設備で綿を紡績するのは難しいとされている。
機械が繊維の長さや性質に合わせた仕様に設計されているほか、湿度管理などの環境設定も異なるからだ。
繊維の長さが平均60~100ミリのウールに対し、綿は20.6~35ミリ程度と短い。
繊維の束を引き伸ばし、整えながら細くしていくドラフト装置で繊維を挟むローラーの間隔は、
それぞれの繊維の長さに合わせて設計している。
そのため間隔より繊維が長過ぎればちぎれてしまうし、
短いとローラーが繊維をつかめずに糸にならないことがある。

 

また、縮れのあるウールに合わせた加圧設定は、縮れの少ない綿では繊維を潰してしまったり、
逆に滑りすぎて均一な引き伸ばしができなかったりする。
そのためこれまでウール用の機械で綿を紡績しようとする事例は少なかった。

 

ただ、東和毛織が所有する英式精紡機は低速で、引き伸ばすドラフト倍率も低いため、
ウール用の紡績機だが「奇跡的に綿糸の紡績ができた」という。
生産性の高い仏式が多く使われるなか、同社は約80年の長い歴史を持つ英式精紡機を400錘所有している。

 

低速だからこそ

 

東和毛織が異素材への応用に挑戦した背景には、春夏素材を強化したい思いがある。
同社はウールや獣毛を中心としたニット糸がメインのため、
「どうしても春夏向けが弱い」(渡邉淳一郎社長)。
そのため春夏に適した糸開発に力を入れており、その一つが綿だった。

 

原料選定と前工程の緻密(ちみつ)な調整を重ねることで、
綿でありながらウールに近いかさ高性としなやかさを持つ糸の開発に成功した。
英式特有の甘い撚り方と空気層が、従来の綿糸では実現できなかった軽さと膨らみ、
滑らかな風合いを生み出している。
低速だからこそ生まれる、手紡ぎのようなムラ感も特徴だ。
渡邉社長は、「長いシーズンで提案できる」と期待を寄せる。

 

 

この糸に着目したのが、瀧定名古屋婦人服地部14課。

原料の設計から編み・整理加工に至る工程を一貫して管理しながら、
新たな生地開発を東和毛織と共同で推進している。
現在、天じく、インレイ、フライスの3品番を販売開始した。
セレクトショップや国内外のアパレルメーカーと商談を進めており、
「その評価は上々」(細川隼人瀧定名古屋同課課長)という。
早くて26~27年秋冬物から店頭展開する予定だ。

 

「ウール用の機械で綿を紡ぐことは非効率に見えるかもしれないが、
その手間を惜しまないことで、他にない素材が生まれる。
産地の技術をどう組み合わせ、どう使いこなすか。
そこに我々の仕事があると思っている」と細川課長は話す。

 

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