メディア 2025.08.05
生地輸出連載 悲願達成に向けて⑲/瀧定名古屋 取締役グローバル事業部部長 黒田剛臣氏
生地輸出連載 悲願達成に向けて⑲/瀧定名古屋 取締役グローバル事業部部長 黒田剛臣氏
現地スタッフ教育に尽きる
繊維ニュース:2025年8月5日(火)更新
――生地輸出事業の現況は。
ファンクショナル・ファブリック・フェアのニューヨーク展は、アウトドア素材に強いメーカーがファッション系のブランドとつながるために出展する場と位置付けられている。
一方、ファッションの生地に強いメーカーがスポーツ系にも取引先を広げたいとして出展する場ともなっている。
今回、アウトドア素材に強い企業は「ファッション系のブランドの来場が少ない」、
ファッションブランドの卸先が多い企業からは「スポーツ系のブランドに思うように見てもらえていない」との声が聞かれた。
バイヤーは来ているものの、それぞれの分野での認知には時間がかかるということだろう。
――国・地域別売り上げ構成比は。
欧州40%、中国37%、韓国が13%、米国7%、ベトナムほか3%です。
欧州と中国の規模がほぼ拮抗していますが、中国が現地法人(以下、現法)のナショナルスタッフと日本人駐在員の計25人体制であるのに対し、欧州はオランダ現法の駐在員4人のみです。欧州は効率が断トツに高く、稼ぎ頭です。
――中国と欧州以外の販売体制は。
ベトナムも現法経由です。韓国は現法と地場の代理店および日系商社。米国は、オランダ現法からの出張でカバーしています。
――各国で販売アイテムが異なります。
フランスとイタリア、ドイツは日本品、スペインの大手ファストファッション向けは中国品です。
同顧客には、生地から製品を一貫提供しています。韓国向けは日本品が中心で、米国向けは中国品および台湾品です。
ベトナムは日本品と韓国品になります。
――生地輸出の強みは。
日本本社をはじめ、中国、韓国、ベトナム、オランダなど、世界中の拠点から収集した情報を一元管理し、それに基づいて各課が商品を開発・生産し、リスクする機能です。
もう一つはその豊富な情報を生かし、顧客の潜在ニーズを先読みし、4千品番もの中から顧客ごとに編集して提案できる企画提案力です。これは、他社にはまねできない部分だと思います。
――課題は。
スピードです。課別独立採算制の当社は、日本で意思決定が速いことを強みとしていますが、世界のスピードにはまだ追いつけていません。
特に中国のECサイトで売っている顧客のニーズは、「今売れているものがすぐ欲しい」です。
日本で備蓄する商材は納期1週間ですから、間に合いません。そのため、“地産地消”を強化しようとしています。
欧州のファストファッションも同様です。生地から製品まで2カ月で納品する必要があります。現在は少数精鋭でカバーしていますが、今後取り組みを大きくしながら、このスピードにどうついていくかが課題です。
――重点開拓市場は。
まずはファッションの捉え方が日本に似ているアジア各国で、数字を伸ばしたい。
欧州6割、アジア4割の売り上げ構成比を、できるだけ早く逆転させたいです。
それと同時に、欧州のラグジュアリーブランドの開拓を改めて強めます。アジア市場への“シャワー効果”を狙います。
――生地輸出のさらなる拡大のカギを握るのは。
各国現法のナショナルスタッフの教育に尽きます。
海外販売拡大の戦略を実行するためには、現地が自ら考え、売り込む力を身に付けることが不可欠です。
スタッフを教育しながら、現地にノウハウが根付く仕組みを作っていきます。